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2024.08.29 皮膚科

ループス状爪異栄養症

  • どんな病気?

・爪の疾患です。

・原因は不明ですが、遺伝性、炎症性、免疫介在性の疾患である可能性があります。

・最初は1本の爪が抜け落ちるところから始まり、次第に他の爪、他の四肢の爪にも抜け落ちることが発生していきます。

・爪の上側が浮いたようになって、脱落するという感じです。

・見た目は、色が薄茶になり、乾燥し、脆く変形したり、爪が細くなって尖ったりすることもあります。

・爪の問題が発生するのみで、全身状態(食欲・元気など)には影響しませんが、爪が脱落して、その部分が気になってしきりに舐めるなどが発生したり、炎症により疼痛が生じる場合は、歩くのを嫌がったりする場合があります。程度も、軽症から重度なものまでさまざまです。

 

  • 診断

発生している爪に、他の疾患がないかどうか(感染がないか、腫瘍がないかなど)を確認し、それらが除外され、かつ、どのように発生しているかの経過を聴取していきます。

確定診断には、切除生検が必要になります。生検は侵襲度が高くなるため、感染や腫瘍の可能性が低そうであれば、経過により試験治療を開始することもあります。

 

  • 治療

・爪のケア

爪が長くなると折れやすくなるので、こまめに爪切りをするなどでケアします。(2週間に1回くらい)

疼痛があるようであれば、保護します。

・内服

抗生物質(テトラサイクリンなど)

抗炎症作用のあるオメガ3系脂肪酸(DHA&EPA)

ビタミンE製剤

免疫抑制剤の使用(ステロイドやシクロスポリン、アザチオプリンなど)

などを、単剤または併用して治療することがあります。

内服は生涯投薬が必要になることがあります。

・二次感染がある場合は、その治療(抗生物質や抗真菌薬など)

・食物有害作用の可能性がある場合、除去食試験を実施

 

  • 実際の症例

好発年齢は、3〜8歳と言われていますが、シニアでも発生します。

このワンちゃんも、シニアさんで、1本、2本と爪が取れて、それを気にしてしきりに舐めていました。続いて、他の爪も順番に浮いて取れていきました。ご年齢や基礎疾患(他に抱えている病気)を考慮して、カラー装着、局所外用薬と、内服もマイルドな治療を選択しましたが、現在、爪はほとんどとれることなく、見た目もほとんど改善し、気にして舐めることや痛みを呈することもなく順調です。

オメガ3系脂肪酸のサプリも投薬していますが、市場に出ているワンちゃん用のオメガ3脂肪酸サプリもかなり種類が多く、DHA&EPAの豊富なものを調べ上げました。オメガ3系脂肪酸は、高用量であればあるほどよいというデータはなく、他の脂肪酸とのバランスが重要と言われていますが、疾患により推奨される用量もありますので、適切な選択をすることも大事だと思っております。

 

文責:神戸アニマルクリニック 獣医師 神吉 紀子

日本獣医皮膚科学会所属

ペットの皮膚科研修医

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