神戸アニマルクリニック

猫伝染性腹膜炎

FIP:Feline infectious peritonitis
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猫伝染性腹膜炎(FIP)について

当院におけるFIP専門外来について

お問い合わせについて

当院での治療

現在、当院で主に使用している薬剤は以下の通りです。

  • レムデシビル
  • GS-441524錠
  • モルヌピラビル

当院は日本で初めてBOVA社と契約を結び、レムデシビルおよび経口GS-441524錠を治療に用いております。
これらの薬剤は治療薬としては以前より海外で使用されており、その実績により国際猫医学会(ISFM)から正式なプロトコル(投与量や使用方法)が提言されています。未だ長期使用による副作用など不明点も有りますが、新薬の中で猫ちゃんに効果があり、比較的安全に用いられる投与量が明確になっていることが大きなメリットです。また事前のFIPウイルスに効果のあるとわかっていた薬剤の中で細胞に対して一番安全性が高いと言われています。またレムデシビルは静脈内注射が可能であり、内服ができないほど重症化した猫ちゃんでも投薬が可能なため、幅広い症例に対応できることも大きなメリットです。
モルヌピラビルでの治療は第二選択とさせていただいております。

当院の治療についての詳細は、こちら

治療実績

すでに当院ではレムデシビルおよび経口GS-441524での治療は100例を越えた実績があります。 現在の治療実績は生存率94%、再発率3%*です。
*開始2日以内に死亡するような重度合併症併発例を除く(2023年11月現在)
生存率には合併症の有無が非常に関わりますので、治療開始はできる限り早い方が好ましいです。

担当獣医師

FIP専門外来は、原則として院長の神吉剛が担当いたします。

院長の紹介は、こちら

FIPについての執筆・講演歴等

  • 獣医学雑誌:クリニックノート2023年4月号

FIPの臨床例について

  • クリニックノート特別セミナー講師
  • 朝日新聞取材(DEGITAL、紙面)
    「助からなかった」ネコ感染症に光明 新型コロナで治療薬進化、劇的な改善猫伝染性腹膜炎」
  • 第41回日本獣医師会獣医学術学会年次大会
    シンポジウム「猫伝染性腹膜炎(FIP)の最新情報」パネリスト
  • 学会発表
    動物臨床医学年次大会2022年
    「GS-441524耐性を疑ったFIPにモルヌピラビルが奏功した1例」
  • 飼い主様へ

    ※お問い合わせ内容が正常に送られている場合は、同内容がご登録いただいたメールアドレスに届きます。
    24時間を超えても、返信がない場合は、送信エラーの可能性がございますので、お手数ですがお電話にてご連絡ください。

  • 他院の先生方へ

    他院の先生からのご紹介も承っております。

FIPとは

猫伝染性腹膜炎(FIP)は猫コロナウイルス(FCoV)感染症です。
猫コロナウイルスには腸コロナウイルス(FECV)とFIPウイルス(FIPV)が存在します。

腸コロナウイルスはほとんどが腸管内に存在し下痢以外の症状を示すことは稀ですが、感染性が高いことが知られています。低毒性のFECVが強毒性のFIPVに変異することで全身に移行し、様々な症状をしめします。ただし、FIPVに変異を起こしたからといって必ずしも発症するわけではなく、動物自身の免疫力などによっては発症しない場合もあります。したがって感染、変異のみならず複合的な要因で発症するものと考えられています。

FECV感染猫の最大12%がFIPを発症すると報告されています。
あくまで抗体保有率ですが、日本では純血種で66.7%日本猫31.2%という報告があります。

疫学

いずれの年齢でも発症する可能性はありますが、主には2歳未満で発症します。
性差のないという報告もありますがメス猫よりもオス猫に多いとする報告の方が多く、当院でもオス猫の方が多い傾向を認めています。

純血種が多いとする報告もありますが地域差も大きく、特定の猫種に極めて多いということはありません。
ただ多くの猫が集団でいる環境下ではFCoVの感染率が高くなるため、純血種の方がFCoVの感染割合は高いとされ注意が必要です。
逆に野良猫は感染率が低いとする報告が多いです。

症状

FIPは病態により様々な症状を示す病気です。

  • 一般的な症状としては発熱、食欲不振、元気消失、体重減少、黄疸などが認められます。
  • 血管炎が生じるウェットタイプでは、胸水や腹水などの液体貯留が認められます。
  • 肉芽腫が形成されるドライタイプでは、リンパ節、腎臓や腸管の腫大、変形など臓器の異常が認められます。
  • 眼の炎症(ぶどう膜炎、虹彩の色調変化など)が生じると眼の痛みや濁りが認められることもあります。
  • 神経の炎症(脳炎、脊髄炎、水頭症など)が生じるとふらつきや麻痺、痙攣なども認められることがあります。

眼や神経症状はドライタイプで認められることが多いですが、稀にウェットタイプでも認められることがあるためしっかりとした診断が必要です。
稀な症状で陰嚢炎、皮膚炎、鼻炎、心筋炎が認められることがあります。

  • 胸腹水貯留(レントゲン画像)横臥位

  • 胸腹水貯留(レントゲン画像)VD

  • 腹水貯留(超音波画像)

診断

確定診断は病変部からFCoVを検出することで、免疫組織学的検査という検査が必要になります。
検査には原則病変部の切除が必要となるため、現実的には困難な場合も多いと思われます。
そのため各種検査によってFIPの可能性が高いかどうか、他の病気の可能性があるのかどうかを判断する必要があります

問診や身体検査、血液検査やレントゲン、超音波検査などで上記症状やFIPが疑われる問題がないかどうかを精査します。

特に血液検査では典型的な総タンパク質の上昇(高グロブリン血症)や炎症の存在を確認し、また貧血や黄疸、ミネラルバランス異常があると生存期間や生存率に影響する可能性があるため全体的な検査が必要です。
レントゲンおよび超音波検査などで胸水や腹水の存在、リンパ節などを含む臓器の異常を確認します。
液体貯留がある場合には液体を検査することで、他の病気の除外やFIPに典型的な液体かどうかの判断が可能です。また肉芽腫に対しても細胞の検査が可能であれば他の病気(主には腫瘍)の除外が可能な場合があるため有用です。いずれも最終的にはFCoVのPCR検査を実施し陽性であれば、ほぼ確定的な診断が可能です。
ただ猫ちゃんの状態によっては検査結果を待てない場合があるので、それまでの検査結果が非常に疑わしい場合には結果が出る前に治療を優先し進めることもあります。

  • 黄色く、粘性のある腹水

  • リンパ節の腫大

通常の治療

FIPの治療には

  • 抗炎症療法:ステロイドなど
  • 免疫療法:インターフェロンなど
  • 抗ウイルス療法

があります。
従来は抗炎症療法、免疫療法が主体であり、免疫療法が功を奏することもありますが多くは一時的な反応に過ぎませんでした。根本的な原因のウイルスに対する治療が困難であり最終的にはほぼ亡くなってしまうという病気でした。

しかし、近年FIPウイルスに対して抗ウイルス作用のある薬剤の研究が進み、実際のFIP発症例に有効であるという報告がなされたことから大きく状況が変わりすでに治療可能な疾患となっています。
現時点では抗ウイルス薬の役割が大きく、多くの場合が抗ウイルス薬のみで治療可能です。ただし補助的に免疫療法が有効である場合や、体調の維持、改善を目的とした抗炎症療法が必要となる場合もあります。
ただステロイドをはじめとする免疫に影響を与える可能性のある薬剤は治療の妨げとなる場合があるため併用薬には注意が必要です。

当院での治療(詳細)

現在、当院で主に使用している薬剤は以下の通りです。

  • レムデシビル
  • GS-441524錠
  • モルヌピラビル

抗ウイルス薬の報告が最初にされた時点では正式な医薬品はなく、長らくブラックマーケット製品と呼ばれるものしか手に入れることはできませんでした。これらの製品の問題は、医薬品のように品質を保証する制度もないため製品の有効成分が不明であり、その内容量も不正確であるということでした。海外の報告では製品によっては有効成分が全く含まれない製品や品質の問題のある製品も認められており、改善するケースはあるものの多くのリスクを抱えた選択肢と言わざるを得ず、正しい獣医学的な治療ではなかったため多くの獣医師がその選択に頭を抱えていました。

皮肉にも新型コロナウイルスの流行によって新たな治療選択肢が生まれ、その中で医薬品であるレムデシビルが海外ではFIP治療薬としていち早く使用されるようになりました。レムデシビルのFIPへの効果は目覚ましく多くの症例を改善させていきました。ただ注射時の疼痛やコストの問題などから海外のBOVA社が動物用の経口GS-441524製剤を製造し使用可能になりました。いずれも海外の医薬品品質基準を満たして製造されており、ようやく有効成分やその用量、品質の安定した正しい獣医学的な治療選択が可能となりました。

当院は日本で初めてBOVA社と契約を結び、レムデシビルおよび経口GS-441524錠を治療に用いております。
これらの薬剤は治療薬としては以前より海外で使用されており、その実績により国際猫医学会(ISFM)から正式なプロトコル(投与量や使用方法)が提言されています。未だ長期使用による副作用など不明点も有りますが、新薬の中で猫ちゃんに効果があり、比較的安全に用いられる投与量が明確になっていることが大きなメリットです。また事前のFIPウイルスに効果のあるとわかっていた薬剤の中で細胞に対して一番安全性が高いと言われています。またレムデシビルは静脈内注射が可能であり、内服ができないほど重症化した猫ちゃんでも投薬が可能なため、幅広い症例に対応できることも大きなメリットです。

以前に比べると比較的安価になったものの費用が高額になりやすいということがデメリットです。体重や症状にもよりますが薬剤で100万円を超えるケースはほとんどなくなったものの、未だ数十万円の治療費はかかります。またFIPの治療では84日間という非常に長期的な薬剤の投薬が一般的なため、薬剤の副作用のリスクも懸念されます。GS-441524による尿路結石の形成というリスクや、レムデシビルはヒトで心筋細胞への傷害性が知られており作用機序を考えると猫ちゃんでは心筋症や腎臓病のリスクとなってくる可能性も考えられます。これらのリスクも最近わかってきたことですので、常に最新の知見をもとに治療をしなければFIPは治ったけれども他の問題が生じてしまうということになりかねません。

当院では常に文献などの情報をはじめ、海外の先端治療を行なっている獣医師ともコンタクトを取りながら最新知見を得て治療を実施しております。そのため同じ薬剤でも生存率を高めるため、再発率を下げるための治療として他院とは違う治療選択をご提示することがありますが、根拠や理由については必ずご説明し相談の上進めるようにしております。

すでに当院ではレムデシビルおよび経口GS-441524での治療は100例を越えた実績があります。
現在の治療実績は生存率97%、再発率2%*です。
*開始2日以内に死亡するような重度合併症併発例を除く(2023年9月現在)
生存率には合併症の有無が非常に関わりますので、治療開始はできる限り早い方が好ましいです。

モルヌピラビルの治療は第2選択とさせていただいております。
報告は少しずつ出てきているものの未だレムデシビルや経口GSに比べて情報が少なく正確な薬用量が定まっていないこと(報告により用量に違いが見られます)、経口剤のみで内服が困難な重症例では適応できないことが理由です。

ただレムデシビルや経口GS比べてとても安価であるため、費用制限などがある場合には相談の上治療を実施しています。
情報が少ないということは副作用についても不明点が多く、GS-441524に比べて細胞障害性が高いことが知られていますので将来的な影響が懸念されます。また人では18歳以下(小児)は適応外であり有効性や安全性の検討はされておらず、妊婦さんや授乳されている方には適応できないため投与される方にも注意が必要です。

いずれの薬剤を組み合わせた治療については現在情報が一切ないため、原則的には行っておりません。
常に新しい情報を集めて、より良い治療選択を実施できるように努めておりますので実際の治療選択などに変更がある場合もあります。

治療をご希望の方は事前にお問い合わせいただきますと最新の治療方法や治療費用についても目安をお伝えさせていただきます。
猫ちゃんの状態が悪く、治療をお急ぎの場合には直接お問いわせいただいても結構です。
ただし費用などは猫ちゃんの状態や情報がなければお伝えが難しいため、来院いただいてからのお伝えになります。獣医師からの紹介もお受けしておりますので、同様にお問い合わせください。

症例写真

FIPのお問い合わせ

*お問い合わせ内容が正常に送られている場合は、同内容がご登録いただいたメールアドレスに届きます。
24時間を超えても、返信がない場合は、送信エラーの可能性がございますので、お手数ですがお電話にてご連絡ください。

他院の先生方へ

他院の先生方からも、FIP治療のご紹介を承っております。
以下のフォームから患者様の詳細情報をお送りください。

ご紹介いただきました患者様は、必要な検査や治療が終わりましたら貴院にお帰りいただきます。
当院にかかられるまでの検査や治療について確認のため、また、経過のご報告をさせていただきますので、
必ず担当医名及びご連絡先をお知らせください。よろしくお願いいたします。

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