蛋白量出性腸症とは
蛋白質が消化管から漏れ出すことが原因で、血中の蛋白質が低下する病気の総称です。
体調不良や、健康診断などで血液検査を実施した際に、蛋白(血漿総蛋白、アルブミン)が低下していることで見つかることが多いです。
症状は、下痢や嘔吐、食欲不振、体重減少などが挙げられます。
しかし、消化器症状を呈さない場合もあり、気づかない間に進行してしまうケースもあります。
アルブミンは、血液中の水分をとどめる役割がありますので、血中のアルブミンが低下し、低アルブミン血症が重度になると、血液中の水分がさまざまなところに出てしまったり(腹水や胸水の貯留など)、血栓ができやすくなり肺血栓塞栓症などのリスクが上がり、場合により致死的になることがあります。
●原因
主な原因には以下のような疾患があります。
・腸リンパ管拡張症
腸管内のリンパ管が何らかの原因により閉塞もしくは破綻してリンパ液が腸管に漏れ出す疾患です。
・リンパ球形質細胞性腸炎(炎症性腸症)
腸粘膜における持続的な炎症や腸絨毛の障害が起きる疾患です。持続的な炎症には、過剰な免疫応答、腸粘膜のバリアの異常、腸内細菌叢の変化、食物抗原など複数の因子がかかわって発症すると考えられています。
・消化管型リンパ腫
消化管腫瘍の中で、犬では最も発生頻度が高い腫瘍の一つです。細胞のサイズによって小細胞性リンパ腫と大細胞性リンパ腫に分類されます。慢性的な消化器症状を呈することが多いですが、大細胞性リンパ腫では急性経過をたどることがあります。
●検査・診断
・血液検査
蛋白が低下する原因として、腸管以外にも肝機能低下や腎臓からの漏出などその他の可能性もありますので、腸管以外の問題がないか全体的にスクリーニングを行います。
・超音波検査
腸管の構造に問題がないか、腫瘤の有無、リンパ管拡張所見の有無、その他、腹部を全体的にスクリーニングします。
・内視鏡検査や開腹下での検査
蛋白漏出性腸症が疑われる場合、内視鏡検査や開腹下での腸の全層生検などによって、腸管の組織を採取し、病理検査で原因を鑑別します。
●治療
・腸リンパ管拡張症
低脂肪食や手作りでの超低脂肪食など食事療法が基本となります。
・リンパ球形質細胞性腸炎(炎症性腸症)
免疫抑制薬を使用します。プレドニゾロンを第一に使用し、食事療法(低脂肪食や低アレルゲン食)を併用します。プレドニゾロンでの治療に反応が乏しい場合は他の免疫抑制薬を併用し治療する場合もあります。
・リンパ腫
悪性度によって治療法が異なりますが、プレドニゾロンやその他抗がん剤を使用し治療を行います。
おわりに
蛋白漏出性腸症は、症状の程度は様々ですが、早期の治療が必要な病気です。定期的な血液検査を含めた健康診断をお勧めします。
文責:獣医師 陣竹 千裕