人間の生活の中には、ワンちゃん、猫ちゃんにとって危険な食べ物や植物、物質などが数多く存在します。口にした中毒性物質によって様々な臨床症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。
ワンちゃん、猫ちゃんにとっての有害な物質を知り、近くに置かない環境づくりで中毒を防いでいくことが重要になります。
ここでは数例、中毒性物質についてご紹介します。
ネギ属に含まれる有機化合物が吸収、代謝されることで強い溶血性の毒性をしめします。
加熱しても毒性に変化はありません。
・中毒量:
一度に大量、または少量でも継続的に摂取した場合に起こりやすいです。
犬:15~30g/kg 猫:5g/kgが目安ですが、感受性によるので、比較的少量でも重症になるケースがあります。
・症状:
1日以内に現れることもありますが、摂取後数日でみられることが一般的です。
嘔吐、下痢、流涎、貧血による粘膜蒼白、呼吸促迫、頻脈、黄疸等。
カカオに含まれるメチルキサンチン(テオブロミン、カフェイン)の作用により、中枢神経や心筋細胞に異常をきたすことがあります。
・中毒量:
チョコレートの種類や製品により含有量が左右されるため、チョコレートの摂取量としての中毒量算出は困難です。
・症状:
摂取後1~6時間で現れることが多いです。
多飲、嘔吐、下痢、活動亢進、振戦、痙攣、頻呼吸、昏睡等
呼吸不全、不整脈により死亡することもあります。
また、チョコレートは脂肪分を多く含み、24~72時間で急性膵炎を発症することもあります。
ユリに含まれる中毒性物質により、直接的に尿細管の上皮障害を引き起こす。また、重度の脱水による腎障害を引き起こします。
・中毒量:
非常に少量でも中毒を引き起こします。花弁や茎、花粉、生けている水を飲むだけでも中毒を引き起こす可能性があります。
・症状:
摂取後12時間後に発症するのが一般的です。
嘔吐、食欲不振、沈鬱、多飲、多尿等
また、腎不全は摂取後24~96時間以内に発症します。
人工透析により救命できる可能性がありますが、人工透析を実施できる施設は極めて少数であり、原則麻酔管理下での処置になります。
多くの場合致死性であり、救命できても慢性腎臓病を患うことがあります。
アセトアミノフェンは人用の解熱鎮痛剤に含まれており(コロナで服用の増えたカロナールなど)、肝障害、腎障害、貧血などを引き起こします。
・中毒量:
猫:10㎎/kg以上が目安
・臨床症状
摂取後1~2時間が一般的だが、長時間経過してからの発症もあります。
沈鬱、粘膜蒼白、チアノーゼ、食欲不振、嘔吐、下痢、顔面・四肢浮腫、呼吸不全等
・シトラスオイル・エチレングリコール・除草剤・ぶどう・キシリトール・ロキソニン等
前述した中毒量や発症時間はあくまで目安であり、個体差があります。
また、胃内に食べたものがある場合は吐かせて中毒成分の吸収を最小限にすることができる可能性があります。
中毒は迅速な対応が予後に影響するため、摂取した可能性がある際はいち早くご相談ください。
文責:獣医師 花房 侑希