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2024.11.06 消化器科

犬の急性膵炎

数年前に、芸人さんが膵炎で入院したりしたことでニュースになっていましたが、

人では、お酒飲みの方に発症しやすいようですね。

ワンちゃんでも、急性膵炎は、日々の診療で比較的遭遇しやすい消化器疾患ですが、当然、飲酒は関係ありません。

 

膵特異的リパーゼの検査ができるようになったおかげで

血液検査で比較的、急性膵炎は診断されやすいですが、

そもそも急性膵炎になるきっかけとなる他疾患の有無を適切に見極めることが重要と考えます。

 

【急性膵炎】

●症状:

食欲元気の消失や、嘔吐・下痢のような消化器症状を伴うことが多いです。

炎症が膵臓だけに限局した軽度の膵炎であれば、治療に反応して寛解することが期待できますが、

周辺臓器へ、炎症が波及する(広がる)場合は、重篤化し命に関わる場合があります。

 

●原因:

病理生態についてはあまり明らかになっていませんが、

危険因子はいくつか知られています。

・食事・・・高脂肪食、食事の内容

・薬剤

・品種・・・テリア、M・シュナウザー

・内分泌疾患・・・副腎皮質機能亢進症、糖尿病、甲状腺機能低下症

・その他・・・高脂血症、高カルシウム血症、炎症性腸疾患、膵管閉塞、腫瘍他

 

●検査・診断:

血液検査

下記の所見が得られることがあります。

・全血球計算:白血球の増加、好中球の左方移動、軽度貧血

・生化学検査:肝酵素の軽度上昇、リパーゼの上昇、膵特異的リパーゼの高値、CRPの上昇、ビリルビンの上昇など

膵特異的リパーゼ検査は、数値の測定が可能(IDEXX外注検査)ですが、迅速に確認するため、院内では簡易キットを用いた検査が実施可能です。

膵特異的リパーゼ簡易キット

 

超音波検査では、腹部をスクリーニングします。

膵臓周囲の高エコー化(白く見える)や、膵炎を惹起する可能性のある肝臓・胆道系疾患や他の消化器疾患などの有無を確認します。

 

・治療

膵炎を引き起こす原因となる疾患が特定された場合は、その疾患に対する治療を考慮します。

急性膵炎自体は、直接治す薬というのはありませんので、膵臓の安静化と積極的な内科的支持療法を基本とし、

患者様ご本人の体調が回復する手助けをしていきます。

 

一昔前は、急性膵炎といえば、絶食・絶飲にて治療していく時代がありましたが、

現在は、嘔吐がなければ積極的に口から食事(経腸栄養)をとってもらうことが基本です。

 

急性膵炎に対する内科的支持療法としては、

点滴、疼痛管理(痛み止め)、吐き気止め、抗菌薬(必要に応じて)、抗炎症薬(必要に応じて)、他

を、実施します。

入院にて治療を要しますが、実際にはワンちゃんの性格や飼い主様の方針などもお伺いし、

相談して進めていきます。

 

食欲不振や、下痢嘔吐などの症状を呈する場合は、早めの受診をお勧めします。

 

文責:獣医師 神吉 紀子

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